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2021.6.9コロナ禍での衛生管理、HACCPの徹底を~ウエルネスライフジャパンセミナー

2021年6月9日(水)~11日(金)、東京ビッグサイト青海会場にて「ウエルネスライフジャパン2021」が開催された。この中から、唐澤 直仁氏(ニチワ電気(株)取締役 営業部長)の講演「コロナ禍でのHACCP」を取り上げる。

HACCP、2021年6月までに導入義務化


衛生管理の見える化を実現したものがHACCPである。2018年の6月に「食品衛生法等の一部を改正する法律」が公布され、「2020年までに飲食に携わる事業者はHACCPを導入すること」が決定、措置期間があるものの実質2021年の6月までに導入することが義務化されている。

これまでに多くの食品関連事業者がこの法律に基づき積極的にHACCPに取り組み、導入を進めているが、コロナで飲食業界のあり方が激変、HACCPについても今一度見直すべきではないか、と唐澤氏。

そもそもコロナ前、日本の食中毒はどのような状況だったのか。コロナ前の2019年は日本では微生物(細菌、ウイルス)による食中毒が食中毒全体の半数以上を占めていた。

しかしコロナになってからは、細菌性・ウイルス性由来の細菌性食中毒は減少している。もちろん緊急事態宣言や蔓延防止措置などにおける飲食店の休業や時短営業による部分も大きい。

テイクアウトにおける衛生管理が手薄に

2019年、食中毒の事件数は1061件だったが、2020年は887件と減っている。しかし患者数は13,018人から14,613人と1,600人近く増加している。

この理由については、コロナによって「仕出し」による食中毒が増えているからではないか。

コロナ禍において飲食店が手がけているテイクアウトも基本的には仕出しの扱いになるが、テイクアウトにおける衛生管理が手薄になっているケースが多い。

そもそもHACCP とは危害要因分析(HA)と必須管理点(CCP)のことだが、危害要因にはウイルスなど生物的危害、食器編など物理的危害、農薬などの化学的危害の主に3種類がある。

これらの危害を未然に防ぐために重要な行程について管理基準を設定することでより厳格に管理する必要がある。

HACCP、7原則12手順

このHACCPを構築するための手順は以下の「7原則12手順」から成る。

手順1:HACCPチームの編成
手順2:製品説明書の作成
手順3:意図する用途及び対象となる消費者の確認
手順4:製造工程の一覧図の作成
手順5:製造工程一覧図の現場確認
手順6で原則1:危害要因分析の実施
手順7で原則2:重要管理店の決定
手順8で原則3:管理基準の設定
手順9で原則4:モニタリング方法の設定
手順10で原則5:改善措置の設定
手順11で原則6:検証方法の設定
手順12で原則7:記録と保存方法の設定

今回義務化されているHACCPの導入については原則食品の製造・加工調理・販売を行うすべての事業者が対象ではある。

しかし、すべての事業者が完璧に取り組むことは難しいため「一般事業者向け」と「小規模向け(従業員数50名以下)」の2種類ある。

前者は「HACCPに基づく衛生管理<基準A>」、後者は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理<基準B>」という、それぞれ簡略化バージョンが認められており、いずれも7原則に基づく衛生管理の部分しか重視されていない。

しかし、特にテイクアウトにおける食中毒予防は「手順1~5」が何よりも重要で、すべての飲食に関わる事業者は「7原則12手順」の全てを一度チェックすべきである。

注意喚起の徹底が大切


飲食店のテイクアウトについて、厚労省は新たに持ち帰りや宅配をはじめる事業所に対し、一般的衛生管理の徹底に加え、ほかに注意すべき事項を別途実施するよう指導するとともに、消費者に対しても、テイクアウトで購入した食品は速やかに喫食するように注意喚起を促している。

具体的には、

  • テイクアウトやデリバリーに適したメニューか、容器かを確認すること
  • お店の希望や調理能力に見合った提供数になっているか
  • 加熱が必要な食品は中心部まで十分に加熱しているか
  • 保冷剤やクーラーボックス、冷蔵庫、温蔵庫などを活用しているか
  • 速やかに食べるようにお役さんに周知徹底しているか


といったことだが、
テイクアウトでの食中毒が増加している現状を考えるとこれらの注意喚起が徹底されているとはいえない状況ではないか、と唐澤氏。

特にテイクアウトを新たにはじめる場合は、HACCPの手順1~5をよく確認し、本当に安全なテイクアウト商品が設計できているのか、現在の厨房システムや、保存システムで安全性が担保できるのか、万一の場合の責任は誰が負うのか、といったことについて確認すべきである。

HACCPによる商品の安全提供の見直しを


また、一般の飲食店が通信販売を行う場合は改めて届出が必要であるし、冷凍食品にして販売する場合も別途許可が必要だ。アレルゲン表示の義務などもある。

テイクアウトを行う上で、ほとんどの店舗において急速冷却機は必須であろう。しかし、コロナ助成金で真空パックの機器はそれなりに売れているが、急速冷却機はそれほど売れていない。

これは、食品衛生に置いて温度管理の重要性について、飲食店の経営者があまり理解していないからではないか、と唐澤氏。

コロナが落ちついてもテイクアウトを続ける事業者は少なくないだろうが、HACCPに取り組み安全に商品を提供する方法を今一度見直して欲しいとまとめた。

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