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2019.9.14高齢者の低栄養と運動機能~第21回ダノン健康栄養フォーラム

2019年9月14日(土)、有楽町朝日ホールにて「第21回ダノン健康栄養フォーラム」が開催された。この中から、小川 純人氏(東京大学大学院 医学系研究科 加齢医学 准教授)の講演「高齢者の低栄養と運動機能」を取り上げる。

健康寿命の延伸プランにフレイル予防

高齢者が要介護や要支援状態に至る背景には、いずれも「フレイル」や「ロコモティブシンドローム」がある、と小川氏。フレイルとは「衰弱高齢者」と訳される。

「高齢期に生理的予備脳が低下することで、ストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転機に陥りやすい状態」と日本老年医学会により定義されている。

最近発表された2040年を見据えた国の指針においても、健康寿命の延伸プランの柱として「介護予防・フレイル予防・認知症予防」が掲げられている。

またこれに合わせ、骨格筋を中心に筋肉量や筋力の低下を指す「サルコペニア(加齢性筋肉減少症)」の診断基準や診療ガイドラインも発表されている。

フレイル、体重減少や筋力低下でチェック

現在、フレイルについては「体重減少」「筋力低下」「疲労感」「歩行速度」「身体活動」の5項目でチェックし、3つ以上該当すると「フレイル」、2つで「プレフレイル」と評価される。

また、フレイルには身体以外に、社会的・心理的・精神的フレイルも含まれる。

「サルコペニア」や「ロコモ」が肉体的要素に限定しているのに対し、フレイルは高齢者の孤立や貧困問題など社会的問題を含むのが大きな特徴で、よりきめ細やかな対応が求められる、と小川氏。

フレイルから要介護に至る過程には、身体的フレイルがきっかけになる場合もあれば、社会的孤立(社会的フレイル)や抑うつ(心理的・精神的フレイル)が引き金になることもあり、幅広い考慮が必要となる。

フレイル、健常から要介護へ移る中間の段階

フレイル状態とは、健常な状態から要介護へ移行する中間の段階が多く、フレイル時期を経て徐々に要介護状態に陥ることが多い。

しかし、適切な支援や治療が受けられれば、健常な状態に戻ることは十分可能である。今「メタボ」という言葉は周知で、「メタボ気味」と言われたら誰もが改善しようとする。

同様に「フレイル傾向」と言われたら生活改善するのが当たり前になるよう、今後フレイルの更なる理解が進むことが期待される、と小川氏。

肉体的フレイルの主な原因に「高齢者の低栄養」問題がある。

高齢者が低栄養に陥る主な原因には「認知機機能障害」「独居」「嚥下障害」「買い物や家事が困難」「多種多剤薬物服用」「胃腸障害」「経済的問題」などがある。実際、在宅で介護を受けている人の70%が低栄養状態という報告もある。

特に高齢者の場合、たんぱく質の摂取量が低下すると筋肉量が著しく低下することが分かっている。これによりサルコペニアやフレイルが加速することも分かっている。

加齢によるホルモン変化、フレイルの要因に

またこれまでの研究で、加齢によるホルモンの変化もサルコペニアやフレイルの要因になっていることも明らかになっている。

疫学的調査では、男性の場合、男性ホルモンが加齢によっても著しく低下せず、一定レベルを保持している人が長生きの傾向があることが報告されている。

女性の場合、閉経により女性ホルモンが低下するが、女性ホルモンの前駆体であるDHEAの値が高齢になっても高い人ほど長生きであるという調査結果がある。

どのような取り組みをすれば、ホルモンの変動や低下をある程度抑制できるのか、これからの研究が待たれる。

ホルモン値によってもフレイルのチェックができるシステムが構築されたり、ホルモン維持のための食事や運動療法の指針が登場する可能性もある。

日本人の食事摂取基準2020年版の改訂でも、高齢者の低栄養予防やフレイル予防を視野に入れ進められている。

高齢者やサポートに関わる人、何より本人が意識的かつ理論的に、効果のある「栄養・運動によるフレイル対策」に取り組めるよう指針とサポート体制がより確実なものに構築されることが望ましい、と小川氏はまとめた。

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