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2021.9.1機能性表示食品、世界でも優れた制度に~アイメックRDセミナー

2021年9月1日(水)、Web配信にて「第5回 株式会社アイメックRD 業界研究セミナー」が開催された。この中から武田毅氏(㈱グローバルニュートリショングループ代表取締役)の講演「海外ヘルスクレーム制度と機能性表示食品~その先進性と可能性について」を取り上げる。

「世界最先端」の制度という目標をほぼ実現


機能性表示食品制度は2013年の6月、当時の安倍内閣の「成長戦略第3弾」の一環として推進され実現した制度である。

その時点で、「日本の健康食品そのものや健康食品の表示制度が世界と足並みを揃えるだけでなく、世界最先端になる」ことを目指し、健康食品の海外展開を視野に入れた制度や仕組みになることを目標としていた。

2015年の制度開始から現時点まで紆余曲折ありながらも「世界最先端」という目標はほぼ実現しているといっても良いのではないか。

この制度において最も重要な点は、届出を行う企業が「どの成分が、どのような目的で、どのような研究(レビュー)を行った結果、誰にどのような機能が与えられると表示できるか」についての責任を明確にする点にある、と武田氏。

世界でも手本となる優れた制度

また、受理されることが目的になってしまうと、消費者庁の顔色を伺うばかりで企業の姿勢や努力が霞んでしまうので、その辺りは自信を持って届け出を出して欲しい。

現時点で、届出制により健康食品の機能性を表示できるのは、世界的に見てもアメリカと日本だけであり、機能性表示食品制度は今後世界でも手本となる、優れた制度であることは間違いない。

これから機能性表示に挑戦する企業は、商品開発において「誰に」「何によって」「何と比較して」「どのような影響を与えるか」、このあたりのデザインを明確にすることが大切。

「誰に」の部分と「どのような変化が起こるか」の組み合わせは無限で、あえて「誰に」の部分を制限することによって、今まで不可能と考えられていた表示さえ可能になるケースが増えてきている、と武田氏。

「事後チェック指針」を精読・分析

現時点で機能性表示食品の届出件数は4000件に迫り、機能性関与成分も300種類を突破している。さらに制度は常に進化しており、特に制度の検証事業が行われるたびに内容がより高度化している。

そのため、これから挑戦する企業はデータベースやガイドラインの確認だけでなく、検証事業報告書も精査することによって、よりスムーズな届け出となる。

特に昨年公表された「事後チェック指針」は精読し分析する必要がある。昨年、これまでどの企業も最初から難しいと挑戦しなかった「免疫」が受理されたのも、企業が制度そのものをきちんと理解していたからである。

制度の理解が正しくなされれば、これからも新成分や新機能であっても届け出は必ずしも難しいわけではない、と武田氏。

欧州食品安全機関(EFSA)のガイダンスを参考に


「健康な人の免疫機能の維持をサポート」で、初めて「免疫」をワードに入れた届け出が実現したプラズマ乳酸菌(キリンホールディングス)が話題になり、今現在も「免疫」による機能性表示にチャレンジしている企業が多い。

そもそも多くの企業が消費者庁のガイドラインから免疫に関する機能性は受理されないと認識していたが、キリンは欧州食品安全機関(EFSA)が発行しているガイダンスを参考にした。

免疫機能に関する表示を科学的に評価するためには「アウトカムや有益な生理的効果に対する機能性関与成分の有効性を検証することが求められていること」。

これに加え「各種免疫マーカーに対する効果についても機能性関与成分のメカニズムを示す指標として重要視されること」。

こうしたことを踏まえ「表示する機能性に対して、pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)に対する有効性と臨床的アウトカム(自覚症状)に対する有効性の2つを研究レビューのアウトカムと設定」し、機能性関与成分の有効性を検証したことにより受理された。

今後も「免疫」での機能性表示を目指すのであれば、やはり免疫学的マーカーの変化によるメカニズムと臨床的アウトカムの2点で有効性を証明した方が良いのではないか、と武田氏。

世界最高レベルの制度に

今後の機能性表示食品のあり方としては「サイエンスとしての適性」と「法規制の遵守」という最低限の条件を満たしつつ、ビジネスとしての機会を最大化できる現実的なポイントがどこにあるのかを企業が見極め、企業が責任を持って判断することによるだろう、と武田氏。

届け出が完了したら終わりではないため、企業は商品を育てていく覚悟で責任を負わなければならない。

プラズマ乳酸菌を使った製品は、すでに米国で「免疫強化商品」として複数商品として展開され需要も高まっている。

まさに制度がスタート時に目指した「世界最高レベルの制度」に繋がる結果が少しずつ出てきているのではないか、と話した。

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