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2022.5.18栄養成分表示、食品表示基準改正のポイント~ifia JAPAN2022セミナー

22022年5月18日(水)~20日(金)、東京ビッグサイトにて「ifia JAPAN 2022」が開催された。同展示会セミナーより、佐藤秀幸氏(一般財団法人日本食品分析センター 基礎栄養部副部長)の講演「栄養成分表示の現状~食品表示基準改正のポイント」を取り上げる。

食品表示基準、一部改正のポイント


文部科学省が管轄する「日本食品標準成分表2020」が公表されたことを受け、栄養成分の分析方法などが新たに追加された。

これを踏まえ、令和2年より消費者庁において「食品表示基準における栄養成分等の分析方法等に係る検討事業」を実施した。

目的はデータベースである日本食品標準成分表との整合性を図ること、そして運用上の課題点と指摘されてきたことを整理するためである。

この事業によって関連する法令の改正などの議論を行い、特に表示する各栄養素の分析方法について追加や修正が行われ「食品表示基準についての一部改正について(令和4年3月30日消食第128号)」として発表された。

この中で、大きく変更となった幾つかのポイントについて佐藤氏が解説した。

一般向け、2020年4月に義務化

そもそも、容器・包装の形態で販売される一般消費者向けの加工食品(業務用以外)については食品表示を行わなければならないことが2020年4月1日から義務化されている。

「表示値」を得るためには、各事業所が「1,分析値 2,参照値 3,計算値」のいずれかで数値を得る必要があるが、すべての原材料の成分値を求めるのは容易ではない。

どうしても分析で出せない場合は、合理的な推定により得られた値であれば、「この表示値は目安です」「推定値」などを栄養成分表示の近くに示すことも可能である。

また、栄養成分の分析方法が規定の方法に限定されていることで、栄養学的に意味がある栄養成分の量又は熱量を分析することが困難な食品がある。このあたりも踏まえて今回の検討事業とそれに伴う改訂が行われた、と佐藤氏。

脂質の測定法など変更

今回の変更ポイントの1つ目が「脂質の測定法」について。以前は脂質を測定するための脂質の抽出方法について「エーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解又はレーゼゴットリーブ法」と5つの方法が具体的に明記され、この範疇でしか試験ができなかった。

しかし、改訂により「溶液抽出―重量法」とまとめられたため、溶媒抽出―重量法であれば測定することが可能となった。

2つ目は「ヨウ素・セレン・クロム」について。改訂では「原子吸光光度法、誘導結合プラズマ発光分析法又は誘導結合プラズマ質量法」が追加された。また、他にも試験法の細部を適宜変更できるように書かれている。

ヨウ素・セレン・クロムは、表示単位がμgでかなり微量であり、これを分析して管理するのはこれまでの技術では難しいと指摘されていたため改訂に至った。

3つ目はタンパク質の係数について。これまでは「窒素・たんぱく質換算係数として6.25を用いる」と規定され、これによる数値の矛盾が起こることが指摘されていた。

アミノ酸と炭水化物の表示矛盾が解消


今回の改訂で「アミノ酸サプリメントや食品添加物等で、製品に含まれる窒素化合物の分子式が明確な場合は、タンパク質として利用されるアミノ酸については分子式から窒素・たんぱく質換算係数を算出し使用しても良い。

それ以外の窒素化合物については、窒素・たんぱく質換算係数を0とする」とされた。これに伴いアミノ酸と炭水化物の表示矛盾が解消された。

4つ目は糖類について。これまでは「単糖類又は二糖類であって、糖アルコール出ないものを糖類とする」と定められていた。

改訂によって「ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖及び乳糖の6糖を基本的な測定対象とし、必要に応じて原材料由来の特徴的な糖類及び添加した糖類についても測定対象とする。測定した個々の糖類含有量の総和を糖類含有量とする」と改善された。

柔軟な試験条件の適用が可能に

全体的に今回の改訂によって表示値を得るために、これまでより柔軟な試験条件の適用が可能となっている。もちろん実際の試験等の内容を明確に示す必要がある。

これまでのように試験方法までが厳格に規定されていると逆に表示値が得られにくいケースもあるため、試料採取量や定容量、検量線範囲などの変更、必要に応じてブランク試験の実施、この辺りが追加されたといえる。

今回は改正が見送られた指摘課題もあれば、脂質の測定法や食物繊維の測定法については日本食品成分表分析マニュアルを参考に、準備が整い次第分析等の通知をさらに改善する予定が見込まれているものもある。

該当する表示が必要な商品を取り扱っている場合は、適宜資料を確認する必要があるだろうと話した。

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