2024年7月16日(火)〜18日(木)、東京ビッグサイトにてウェルネスフードジャパン2024が開催された。国内外の健康食品・機能性食品素材産業の業界関係者が4万人以上足を運び、活発に情報交換が行われた。
(一社)日本最適化栄養食協会 理事長 伊藤 裕
日本最適化栄養食協会は、主要な栄養素がバランスよく適切に調整された「最適化栄養食」の普及を図り、人々のウェルビーイングに資することを目的とし有識者たちによって2023年7月に設立された。
日本人の現代の食に関する課題は大きく3つあり、その3つとは「肥満(メタボリックシンドローム)」「低栄養」「フレイル」だ、と伊藤氏。「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」とは内臓の周りに脂肪が過剰に蓄積した内臓脂肪型肥満と、さらに脂質異常、高血圧、高血糖のいずれか2つ以上を合わせ持った状態を指すが、メタボリックシンドロームが進行すると、ドミノ倒しのように高血圧や糖代謝異常などが起こり、さらに動脈硬化、虚血性心疾患や脳血管障害、やがて心不全や脳卒中などの病気に至るケースが多く、これをメタボリックドミノという。メタボリックドミノを起こさないようにするためには一つ目のドミノともいえる「食生活の偏り」と「運動不足」という生活習慣を整えることが重要である。そして「低栄養」については、特に若い女性を中心に問題が深刻化している。不正確な情報や誤ったボディイメージ、誤ったダイエット法の流行で、カロリーだけでなく摂取すべき栄養素も慢性的に不足することで、その時だけでなく、長期間に及んで悪影響が起こり、生理や妊娠・出産のトラブル、更年期障害、老年期の骨粗鬆症の原因になるほか、次世代にまで影響を与えてしまう。そして比較的最近、高齢化社会の大きな問題とされているのが「フレイル(虚弱・脆弱)」で、フレイルそのものは身体的・認知的機能の低下は見られるが、健康な状態と要介護状態の中間に位置し、適切な介入で回復が期待できる状態だ。加齢に伴い食事量が低下したり、消化機能や嚥下機能が衰えることで栄養素が不足すると、筋力は低下し骨が弱くなり病気や怪我のリスクが高まり、健康寿命が短くなる可能性が増す。そのため、フレイルの超初期を敏感に察知し、そこで適切な対策を行うことで健康に戻すことが大切だ。
しかし、個人個人に「最適」な栄養素や食事内容は、性別や年齢、生活習慣などによって異なる。最適化栄養食協会では、「最適化栄養の基準」に4つの項目を挙げている。一つ目が食品表示基準で表示が義務付けされている栄養成分および、9種類の必須アミノ酸を含むタンパク質、および機能性を表示することが認められている栄養成分20種類の計33種類の栄養成分について、ターゲット者の性別・年代・特徴などに応じて、科学的根拠に基づき含有基準を定めたものであること。2つ目に1で定めた33種類の栄養素以外についても、栄養学上の観点を考慮して含有基準を新たに設定できること。3つ目に摂取上限がある栄養素について上限を超えないもの。4つ目に同様の栄養設計の食事の健康に与える影響がヒト試験で検証されていること。この4つを中心に協会は「最適化栄養食」の規格化を進め、最適化栄養の安全性確保のための新たなフードシステムを構築しているという。一般消費者は健康意識が高くても食べたものの栄養素を正確に把握することは難しく、また家族構成などを考慮して、一人一人にあったバランスの良い食事を作るのも難しい。何より自炊・中食・外食のいずれにおいても、栄養バランスの整った食事を選択することは容易ではない。
協会では最適化栄養食を普及されるために、認証マークを作成。協会が規定した栄養設計基準を過不足なく満たしていれば加工食品だけでなく外食・中食・給食などあらゆるシーンにおいて認証マークをつけることができるようになっている。今後はトクホマークのように私たちが生活の中で目にする機会が増えていくように更なる普及を図りたい、と伊藤氏。 最適化栄養食は定義や基準が非常に重要であるが、おいしくて栄養バランスが整った食事を豊富な選択肢から個人個人が選ぶことができる未来が実現すれば、普段の食事をするだけで無理なく疾病予防と健康維持が可能となる。すでに日清食品の「UFO汁なし担々麺」や「カレーメシ」など人気インスタント食品が認定マークを取得し、おいしさと利便性だけでなく栄養バランスを満たす製品へ進化している。一人一人がより「健康になれる」食事を選べる社会の実現に向けて、協会活動を進めていきたいと話した。