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2024.1.8新開発食品の安全性評価−アレルギー誘発性−令和5年度東京農業大学総合研究所 食の安全と安心部会

2024年2月19日(月)〜3月4日(月)オンラインにて、食品開発展プレゼンフォートナイト2024冬が開催された。ここでは(一財)生産開発科学研究所による「アスタキサンチンその研究史、自然界での機能、注目される生理活性」を取り上げる。

国立医薬品食品衛生研究所 爲廣 紀正

新開発食品とはバイオテクノロジーなどの高度な先端技術を用いて製造された食品のことを指し、具体的には「①組み換えDNA技術」「②細胞融合技術」「③組織培養技術」「④バイオリアクター技術」、もちろん「細胞培養肉」などが含まれる。いずれにせよ現代社会において、私たちヒトがほとんど摂取したことがない食品の多くは「新開発食品」に該当する。食経験がない食品については当然、健康被害を想定し規制を行う必要がある。その動きは日本だけでなく諸外国でも行われていて、例えばシンガポールでも米国でもそれぞれ「規制」や「ルール」があり、特に新開発食品のアレルギーリスク調査や培養肉の安全性審査などが行われている。

食糧不足が世界的課題となっている背景から、新開発食品の必要性は世界各国で高まっているが、FAO(国際連合食糧農業機関)とWHOからは「培養肉の安全性に関するレポート」が公表されている。目的は「各国の規制機関が細胞由来食品の生産に関する最新の情報と科学的知識を共有する」必要があるからで、細胞性食品の危険因子やそれらのリスク回避方法に関する情報について、特に①細胞の由来、②細胞の生産、③細胞の回収、④食品加工についてレポートし、細胞性食品の製造に特有な特定の材料、添加物、成分(アレルゲンも含む)、および設備にも焦点を当てて検討を続け情報共有が必要であることを言及している、と解説。このような安全性に関するガイドラインの必要性が認識されるようになったのは1991年ごろからで、海外の事例であるが、新開発食品の「ナッツを組み込んだダイズ(ブラジル)」と「害虫抵抗性遺伝子を導入したとうもろこし(スターリンク)」でアレルギー症状が指摘され、やはり新開発食品にこそ安全性を確保するための評価手段やガイドラインが必要だという気運が高まったという。日本でも1991年に「組み換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全評価指針」が策定され、1996年には「遺伝子組み換え食品を摂取する際の安全評価として、遺伝子産物のアレルギー誘発性に関する資料の提出が要求」されるようになり、さらに同年には「組み換えDNA技術を応用して製造された食品7種類の安全性について諮問が行われる」などを経て、現在は食品9作物(じゃがいも12品種、大豆29種、てんさい3種、とうもろこし210種、なたね24種、綿48種、アルファルファ5種、パパイヤ1種、カラシナ1種の食品9作物333種と、添加物24種80品目について、安全性審査が完了した状態となっている。

このように新開発食品といっても日本の場合はまだ「遺伝子組み換え食品」が主な対象だ。ちなみに遺伝子組み換え作物の場合①生物多様性への影響(カルタヘナ法)を農林水産省と環境省が、②食品としての安全性(食品衛生法/食品安全記方法)を厚生労働省が、③飼料としての安全性(食品安全記方法/飼料安全法)を農林水産省が、それぞれ評価した上で、最終的に食品安全委員会がリスク評価を行い流通や栽培の規制を行う流れになっている。また食品安全委員会は、安全性未審査の遺伝子組み換え食品が流通していないことをモニタリング検査もしているという。ちなみに遺伝子組み換え作物の現状の評価項目は「組み込む前の作物をヒトが食べた経験があるか」「組み込む遺伝子やベクター(遺伝子導入ツール)の安全性について、病原性や毒性がないか、導入遺伝子がどのように働くか」「組み込んだ遺伝子からできるタンパク質がヒトに有害でないか、アレルギーを起こさないか」「組み込んだ遺伝子が間接的に有害物質を作る可能性はないか(目的以外のタンパク質を発現させないか)」「非意図的に栄養素や毒性物質の量が変化していないか」などを評価している。特にアレルゲン性評価については検査が厳しく「アレルゲンの性質と似ているか」「アレルゲンとして報告されている配置と相同性が高いか」「内在性のアレルゲン発現量が増加したかどうか」など細かくチェックし、遺伝子組み換え食品によってアレルギーになる可能性が高いものは使用も流通も禁止される。日本では遺伝子組み換え食品についてはこのような実績と知見を積み重ね、現在は厚労省の国立医薬品食品衛生研究所が「アレルゲンデータベース(Allergen Database for Food Safety)」を開発しているという。 「アレルゲンデータベース(Allergen Database for Food Safety)」は、世界中の研究者が容易にアクセスできる大規模データベースであり解析ツールで、日本だけでなく他国でもこのようなデータベースは開発されているが、ADFS(アレルゲンデータベース)はアレルゲンの既存データベースに加え分類、一時配列、アミノ酸配列等により検索や解析ができるようになっており、既存アレルゲンとして登録されている物質における相同性の確認やアレルゲン性予測ツールとしても活用できる仕組みになっているという。さらに、国ごとの規制基準も検索可能だ。海外にもいろいろなデータベースがあるが、日本で開発されたこのADFS の役割や貢献度は大きいという。ただし、このデータベースの維持と活用には継続的なアップデートが必須で、アレルゲンの予測についてもさらに予測率を高くする手法が求められているという。現在は遺伝子組み換え食品が中心だが、新開発食品の安全性を担保するために、新開発食品の解析や評価をより正確に多角的に行う技術も並行して開発し続けていく必要があるとした。

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