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2023.1.16生鮮食品を含む機能性表示食品制度への期待と今後の展望第2回 国際発酵・醸造食品産業展

2022年11月29日(火)〜12月1日(木)、東京ビッグサイトにて発酵・醸造食品大国の日本の食文化拡大のため、世界中の発酵・醸造関連技術やサービスが一堂に集結する展示会が開催された。近年は発酵・醸造の健康効果やそのエビデンスが数多く発表され特にコロナ禍で自然免疫向上が求められる中で、腸内環境の改善による免疫力の向上やアンチエイジング効果などの研究が活発に進められている。ここでは出展社セミナーから発酵・醸造に関する最新セミナーを取り上げる。

農林水産物・食品の輸出促進について

農林水産省 輸出・国際局国際地域課国際交渉官 西尾暁


国内市場はさまざまな局面で残念ながら縮小傾向にあるが、外国市場における日本の競争力は高まっており、輸出額の総額は過去最高だった去年よりも伸びている、と農水省の西尾氏は話す。安倍政権時代から輸出額で1兆円突破を長く目標にしてきたが、昨年度、初めて目標の一兆円を超え、今年度の輸出額はそれを上回る約1兆4千億円で着地しそうだと話す。これは円安による影響もあるがそれだけではない、と農水省は分析。

輸出額の増加が大きい主な品目としてはホタテ、牛乳と乳製品、日本酒、イチゴなどがあり、これらに限らず日本の食品や食材は世界でも高い評価を得ているという。また栄養補助食品(サプリメント)の輸出額も大きく、232億円を突破(2022年1〜9月)。輸出国としては中国、香港、台湾、ベトナム、アメリカの順に多くなっているという。栄養補助食品の輸出額はこれまでブラックボックスで「その他」の中に含まれていたが、この「その他」のなかの多くが栄養補助食品なのではないか、具体的な品目なども明らかにした方が良いのではないか、という声が年々大きくなり、昨年はじめて調査を行い集計を取ったという。この「栄養補助食品」が具体的にどんな製品であるのかについては、おそらく健康に寄与する清涼飲料水の割合が大きいと推測されるがそこまでは調査しきれていないので、企業から調査の必要性が訴えられることで農水省も総務省も動きやすくなるため、ぜひそのような声や情報を寄せて欲しいと話した。

実は、輸出については国の政策や施策が薄く、これまでは各企業努力による部分が大きかった、と西尾氏は話す。しかし2019年に輸出促進法が成立。それによって輸出促進の体制が整備されるようになった。本法律は今年度も改正され「オールジャパンで輸出拡大に取り組む認定農林水産物・食品輸出促進団体の認定制度の創設、新たな制度資金や税制上の当例などが拡充された」と説明。この法律ができたことで国として特に力を入れてきたことが「原発事故のよる諸外国・地域の食品等の輸入規制の緩和・撤廃」への働きかけであると説明。事故後は55ヵ国が規制を儲け、それらの国へは日本からの輸出が厳しくなったが、現在は43ヵ国が規制を撤廃し、残りの12ヵ国については引き続き撤廃交渉を積極的に続けていくと話した。

輸出を拡大させるために国としてできることとして、他にも動物検疫や植物検疫の課題があるという。畜産物の輸出に当たっては、相手国の法令に基づき、食品衛生及び家畜衛生に関するリスク評価を受け、輸出条件に合意するなどの手続きが必要だ。どの国とどのような交渉をすれば輸出額が上がるのかを想定し優先順位を決めて交渉や働きかけを行なっているが、特に植物検疫は、現在14ヵ国を相手に取り組んでいるが(2017年以降は9ヵ国)、日本ではなんの影響もない病害虫が海外に移動した時に生態系を崩さないか、など証明するには時間がかかり、そのような背景から、要請から解禁まで早くて2〜3年、長くて10年はかかる案件であると説明した。

今年度10月1日より施行されている輸出促進法の改正ポイントとしては、特に中小企業に対し輸出計画の作成を任意でお願いしているが、それに応じてもらえると事業の優遇措置や金融公庫から資金面の協力面が受けられたりするようになった、と説明。民間より金利は当然低いので、輸出にチャレンジする事業者を国も資金面から協力に後押ししたいのでぜひ利用して欲しいと話す。

また輸出拡大余地が大きく、日本の強みを有し海外で評価される品目「輸出重点品目(28品目)」を選定していると紹介。具体的には「和牛、とんかつや焼き鳥など日本の食文化につながる豚肉や鶏肉、卵(特に半熟卵文化)、牛乳・乳製品(特に台湾や香港で高評価)、茶、米、ぶり、たい、ホタテ、真珠、味噌・醤油、清酒、焼酎」などでこれらを原料とした機能性表示食品なども当然充填品目として含まれるので輸出にチャレンジして欲しいとした。また、日本には例えば「キウイのゼスプリ」や「オージービーフ」のような誰もが知っているナショナルブランドの輸出団体がないことも課題だと話す。「青森産りんご」など県別に販売している現状があるが、これを「ジャパンブランド」として売り出せるように体制整備を図りたいと説明。また、海外では有機食品の人気が高いが、農産物加工品については米国、カナダ、EU等とJAS法に基づく有機認証制度に関して同等性を締結しているので、日本において有機JAS認証を取得していれば、輸出先国・地域の有機認証を別途取得しなくても有機として輸出することが可能となっていると説明。現在、酒類については諸外国の有機と同等性が除外となっているが、現在ここについては改正を行なっていて、改正後には、有機酒類の製造業者は登録業者から有機JAS認証を取得することで、自らが製造した酒類に有機JASマークを貼付し「有機」の常時を行なって販売することが可能になると想定されている。

日本の品種や技術が流出することを防ぐための方向性も本年度中にまとまる予定だという。シャインマスカットが中国や韓国に流出してしまったことが話題になったが、今後このようなことがないように、育成者権者に変わり、専任的に知的財産権を管理・保護する育成者権管理機関の設立に向け動いているという。

健康食品を含む日本の独自の食品・技術には世界で勝負できるもの、世界で求められているものが多く、輸出という角度から考えると、まだまだ成長が期待されるものばかりだという。ぜひ、多くの企業に、そしてオールジャパンで輸出に対する取り組みに力を入れて欲しいとまとめた。

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